何も知らなくても、思い切ってできる。WEBメディア「PHILE WEB」編集長が日々を積み重ね築いてきたもの

音元出版の“中の人”のストーリー集<Ongen Stories>
Vol.2:Yu Oshino

音元出版が展開する「 PHILE WEB(ファイルウェブ)」は、AV/オーディオ/モバイルのカテゴリーの専門媒体として、さまざまな情報を発信するWEBメディア。今年5月にサイトのリニューアルも実施し、より見やすく伝わりやすい表現での情報発信を追求しています。メディア構築の指揮を執る編集長が、仕事や自分についてを振り返ったインタビューをお届けします。

押野由宇

Yu Oshino
WEBメディア「PHILE WEB」編集長

株式会社音元出版 メディア事業本部 PHILE WEB編集局 執行役員 PHILE WEB編集長

(Profile)

2011年10月 株式会社音元出版にアルバイトとして入社。同年12月に正社員としてオーディオ編集部に配属。「Net Audio」を中心に「オーディオアクセサリー」「アナログ」の各雑誌の編集を担当。「別冊アニソンオーディオ」の編集に携わる。2016年「PHILE WEB」編集部に配属。2020年2月「PHILE WEB」編集長に就任。2022年5月PHILE WEB編集局 執行役員に就任。(2024年3月 株式会社音元出版退社)

専門媒体ならではのこだわりを追求
独自のコンテンツを、独自の切り口で

ーー 音元出版のWEBメディア「PHILE WEB」がこの5月に新デザインにリニューアルされました。あらためて媒体をご紹介くださいますか。

押野 「PHILE WEB」は、専門誌を発行する音元出版にとって初めてのWEBメディアとして1999年に開設されました。専門媒体として、オーディオやオーディオビジュアル、ガジェットといったカテゴリーを対象としています。現在では月間500万人のユニークユーザーが訪れてくださり、2000万ページビューを記録する国内最大の専門媒体として、リアルタイムな情報を発信するニュース記事を中心に、さまざまな切り口の記事を作成し、お届けしています。

今年の5月にデザインをリニューアルし、より見やすく、視覚的なインパクトのある体裁になりました。音元出版が基盤としてきた、オーディオ、オーディオビジュアル、ホームシアターのカテゴリーを強固な軸にしながら、今後は新しいカテゴリーも対象に加えていきたいと思っています。

リニューアルした「PHILE WEB」のトップページ(左はPC版、右はスマートフォン版)。写真を大きく配置して視覚的なインパクトを高めています

ーー WEBメディアとして、早くかつ正確な情報発信が求められると思います。どんな風に記事作りを行っているんでしょうか。

押野 日頃から常にアンテナを張って情報を収集して、編集部内で連携しつつ随時ニュース記事を作成しています。一方で、より深く掘り下げた記事づくりも欠かせません。今は誰でもネットで情報を入手できますが、我々は独自の切り口で情報を掬い上げて、コンテンツに落とし込み、発信します。キーパーソンに直に接して貴重な情報をお聞きしたり、プロの評論家と連携して信頼度の高い製品レビューをお届けしたり、専門媒体として価値のあるオリジナルコンテンツを発信しています。

初めての経験ばかりの日々、
たくさんの助けを受け少しずつ前進

ーー 押野さんについてお聞きしますが、ちょっと変わった経歴をお持ちですよね。

押野 僕は北陸出身で、地元の大学を卒業してから地元で医療系の会社に入って、東京出向で初めて上京しました。転職してカフェで働くようになり、その後アルバイトで音元出版に入ったんです。カフェにオーディオ機器があって、かっこいいなと思って自分でも買ったんですけど、面接の時にそれを言ったのがよかったみたいです。

オーディオの編集部で仕事をして何ヶ月か経ったとき、たまたま社員の募集があって話をいただいて、試験を受けて社員になりました。そのままオーディオ編集部に配属されたんですけど、もともと編集の仕事もオーディオも、知識は何にもなくて・・。でも先輩方や、評論家の先生方からもやさしく教えていただいて、機器のセッティングとかオーディオの音の違いとかを体験して、だんだん身についていった感じです。

ある時「別冊アニソンオーディオ」という雑誌を新しく創ることになり、僕は社員になって2年目くらいでしたが、中心的な立場でやらせていただけたんです。もちろん本1冊をまとめるのは、経験もなくすごく大変でしたけど、まわりに助けていただいてなんとかやり遂げることができました。若い人にもいろいろ経験させてくれるのが、音元出版らしさかなと思います。

そのあと「PHILE WEB」で人材が必要になって声をかけていただき、異動になりました。オーディオ編集部で「アニソンオーディオ」に関連した話題や企画をファイルウェブ上で記事にさせてもらっていましたし、「Net Audio」でイヤホンやヘッドホンを取り上げていて、「PHILE WEB」でよく取り扱うカテゴリーとの親和性も高くて、そういう意味では、WEBの編集のことはわからないながらも多少の経験はできていたのかなという感じです。

ーー 「PHILE WEB」の編集長になったのは2020年2月ですね。このあたりの経緯はどうだったんですか?

押野 話をいただいて、すごく尻込みしていたんです。僕は会社にも編集部にも、何も知らない状態で入ってきて、そういう視点でのいろいろな企画を「PHILE WEB」で記事化して、一部では受けてたんですよ。それが自分でも楽しかったですし。でも編集長になるとそういうことができなくなって、自分なりの強みが活かせなくなるんじゃないかなあと。でも、しばらく時間をいただいて経験を積みながら、編集長がどのような業務や考え方をしているのか、といったことを見て学びました。そのうえで、覚悟を決めてやらせていただくことになりました。

仕事への向き合い方など変化せざるを得ない部分はありますし、時間が取りにくくなったことも確かですが、そのなかで記事に携わる機会を持とうとしています。やっぱり、記事が読まれると嬉しいですからね。

自分に向いていないことをどうにかするより
好きなことを伸ばした方がいい

ーー 押野さんが企画した記事、ご自身も画像に出られたりしていて、あれ面白いですよね。

押野 企画、演出、出演と、全部自分でやってます。出演は恥ずかしいんですけど、欲しい写真のイメージを人にお願いするのも気が引けますしね。そういう企画は、友達も興味をもって「見たよ」って言ってくれるんですけど、知っている人から反応があると一層嬉しくて。そういったことが、自分のモチベーションを上げるのにもつながっています。

“出演”も果たしている押野さん作成の記事。2016年のもの

ーー 若い人たちにいろいろなことをどんどんやってもらえば、押野さんにも時間ができそうですよね。

押野 それは編集長としての課題のひとつだと思ってます。僕自身も経験させていただいたように、大きな仕事になんとか対峙してスキルを身につけることで、発想や仕事のやり方を広げられると思います。そんな風土をつくりたいと常々思っているんです。好きなものを、発想力を生かしてやれるようになってほしいです。みんなに。

向き不向きってあると思いますけど、向いてない方をどうにかするより、向いていること、好きなことにアンテナを張ってどんどん伸ばしてもらえると、「PHILE WEB」にとってプラスになる専門性が生まれるんじゃないかと思います。それを生み出すのは僕じゃないです。僕は、今のテリトリーを守って、土台をしっかり固める。そこでみんなが生き生きと育ってくれたら。そういうのが編集長の役割かなと思います。

楽しくないことも含めて仕事だと思うんですけど、やりがいを感じる瞬間は、もちろんありますよ。ただ仕事とそうでないところとでは、なるべく分けています。仕事のことをずーーっと考えていると疲れちゃいますから、休みの時はなるべく何も考えないで、ぼんやりして。ずっと同じゲームをやり続けたり、気になったドラマや映画を見たり、いまだに大学生のような過ごし方をしています。よく言えば、当時の感性を保っているというか(笑)、そういう感じで発想できることや、見つかるものがあればいいなと思ってます。

これからますますサイトの充実を図りたいので、そのためにも僕や編集部のみんなでさらに成長を目指します。特に若いスタッフが成長できるよう、日々の仕事のバランスをとったり舵取りをしたり、頑張っていきたいと思います。


オーディオ・ビジュアルを軸に据えて
「PHILE WEB」をさらに発展させる

ーー 「PHILEWEB」の今後も楽しみですね。

押野 「PHILE WEB」が皆さんに支持され、ここまで大きな媒体に育つことができたのも、オーディオやビジュアル、シアターといったジャンルの専門媒体として、深く確かな情報を発信し続けてきたからだと思います。そこは「PHILE WEB」の軸であって、決して揺らぐことなく、これからもみんなで専門性の高い記事を発信していくことが第一だと考えています。

そしてさらに成長させるために、「PHILE WEB」の軸を守りつつ、新しいことにもチャレンジしたいです。突飛なことではなくて、軸をさらに発展させ広げていけたらと。たとえばゲームの分野。オーディオやビジュアルのファンでゲームが好きな方もいらっしゃれば、ゲームが好きでサウンドや映像のクオリティに関心があるという方もいらっしゃるでしょう。音質、画質の側面からデバイスの評価を行って、プレイが楽しくなる方法を提案するといったアプローチは、「PHILE WEB」の知見が活かせるはずです。

「PHILE WEB」の今の読者の方にも、また新しい方々にも興味をもっていただけ、エンターテインメントがより一層楽しめる情報を発信していければと思います。僕も楽しんで頑張ります。よろしくお願い致します。

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